親権者の変更について

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親権者の変更について

夫婦の間に子供がいる場合、離婚に際して子供の親権者を父にするか、母にするかを決めなければなりません。

親権者が決まらなければ、離婚届は提出できません。

離婚後に親権者を変更する方法はありますが、簡単に変更できるものではありません。

協議離婚をする時には、当事者間の話し合いで自由に親権者を指定できますが、一度親権者を指定し離婚をした後では、

親権者を変更できるのは、家庭裁判所に限られています。

(★民法819条6項は、「子の利益のため必要があると認める時は、家庭裁判所は、・・・親権者を他の一方に変更することができる。」としています。)

これは、親権者の変更は子供に大きな影響を与えることから、親の身勝手で安易に親権者の変更が為されることによって子の福祉に反することのないよう、監督する観点から定められたものと言われています。

離婚の際に決めた親権者を変更するには?

 

親権者変更が必要になった場合、まず、親権者変更調停を家庭裁判所に申し立てる必要があります。

申し立てを行う家庭裁判所は、基本的には相手の住所地を管轄する家庭裁判所です。

調停での話し合いでの合意を目指しますが、それが出来なければ、審判に移行します。

審判では、双方から出された主張や証拠に基づき、家庭裁判所が親権者変更について判断することになります。

審判の内容に不服があれば、審判の決定を受け取ってから2週間以内に不服申し立てをすることができます。

不服申し立てをすれば、高等裁判所で改めて審理がなされることになります。

すでに合意ができている場合

父と母の間で親権者の変更についてあらかじめ合意が出来ている場合は、そのことを前提に、

親権者の変更を求める理由

子供の意向

子供の現在の生活状況等

 

について調停委員から聞き取りがなされ、親権者の変更が子の福祉に反しないと認められれば、1~2回の期日を経て調停が成立することになります。

この場合には、基本的には行われる調査官調査も行われないことも多いようです。

家庭裁判所調査官は、心理学、社会学、教育学、社会福祉学等の専門知識を有するものとされており、子の監護状況、子の意向等を調査します。

調査官調査について

家裁調査官がお子様、両親それぞれと個別に面談し、

親権者についてのお子様の意向

子どもの監護状況や生活状況

夫婦それぞれの監護態勢や、経済状況、心身の状況

等の調査が行われます。

親権者の変更について、全く合意ができていない場合

一方、父と母の間で親権者の変更について全く合意できていない場合には、早期解決はなかなか難しいことが多いです。

非親権者から、

親権者は子供の面倒を見ていない、

親権者に新たな交際相手ができて子供に悪影響が生じている、

等と主張して親権者変更調停を申し立てる事例が多いです。

また、面会交流を取り決め通りに実施しない親権者にプレッシャーをかける目的で申立が行われる事例もあります。

 

親権者変更調停で問題となること

調停の話し合いの中では、

離婚時に親権者を決めた経緯

親権者を決めた後に事情の変更があったかどうか

 

などが問題となってきます。

また、多くの場合、前記のように、家庭裁判所の調査官が父、母、子供への聞き取り等の調査を行います。

子供が十分に意見を言える程度の年齢に達していれば、子供の意向も尊重されますが、子供の意向だけで決まるものではありません

 

弁護士に依頼していれば、調査官からの父、母への聞き取り調査に弁護士が同席することも可能ですが、事実関係に関する聞き取りなので、難しい法律的な話をしなければいけないことはありません。

弁護士に依頼していても、聞き取りに弁護士が同席しないことも多いです。

裁判所の判断について

裁判所は、子供の生活環境を安定させることを最も重視しています。

そのため、親権者の変更を求める親が子供と長く離れて生活している場合には、親権者の変更を認める可能性は低くなります。

子供が親権者の元を離れ、非親権者と一緒に生活している時間が長くなれば、非親権者への親権者変更が認められやすくなります。

 

お子様が複数の場合

子供が複数いる場合、基本的には兄弟を分離することは望ましくないと考えられています。

当事務所で担当した事案

当職が担当した事案で、二人の子供の親権者が一人は母、一人は父として調停が成立した事案がございました。

このケースでは、離婚に際し、子供二人の親権者を母としていたものの、父から親権者変更の調停を申し立てられました。

調停手続きの中で、子供達の意見を聞いたところ、子供のうち一人が父との生活を望み、もう一人は母との生活を望んでいました。

当初、裁判所は、兄弟を分離することになるため、一人についてだけの親権者変更に否定的でした。

代理人としては、子供の意向に沿った判断となるよう、分離後も兄弟がこれまで通りの関係を維持するため、面会交流については、子供それぞれについて、父、母それぞれと面会交流を実施する内容とし、頻度についても細かく取り決めすることで、最終的には子供一人の親権者を父に変更する(兄弟を分離する)内容で、調停が成立しました。

また、親権者変更について合意の見通しが立った段階で、養育費減額請求調停も申立て、同時に養育費の減額についても取り決めをしました。

 

弁護士からのコメント

離婚の際に一度合意している親権者についての変更は、やはり簡単ではありません。

離婚を早く成立させるために、親権について譲歩し、後で親権者変更調停を申し立てる方法をとられる方もいらっしゃるようですが、

後で親権者を変更することはとてもハードルが高いため、そのような方法はお勧めできません。

親権者変更の調停申立てをお考えの方や、突然、元配偶者から親権者変更調停を申し立てられた方は、一度、弁護士にご相談ください。

早めにご相談いただくことで、解決の方法も複数選択できる場合もございます。

 

相談の申し込みはメールでも受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。

   

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