配偶者と離婚したいと考えていても、その後の生活費や養育費に不安を持つ方は多いでしょう。
実際、金銭的な不安から離婚に踏み切れない人は多いです。
離婚後の生活に不安を感じる人に向けて、公的扶助があることはご存じですか?
今回は離婚後に受けられる公的扶助についてご説明しましょう。

離婚後の公的扶助とは?

公的扶助とは、離婚により母子または父子家庭となる世帯に向けて、最低限の生活を都道府県や市区町村が保障してくれる制度です。
制度は色々あり、大きく分けてお金に関する公的扶助と生活に関する公的扶助があります。
自治体ごとに所得に制限があるケースも多く、内容や種類も違ってくるので、市区町村役場で確認した上で申し込みましょう。

お金関係の公的扶助

お金に係る公的扶助には、以下の制度が挙げられます。

児童扶養手当

シングルマザーやシングルファザーといったひとり親世帯が受けられる手当です。
ひとり親世帯の児童に手当を与え、安定した生活の実現と自立を促すために設けられました。
かつては母子だけでしたが、現在は父子も対象なので男性側が親権を取った場合も利用可能です。
対象となるのは、18歳(高校を卒業する)まで子どもを育てている親権者です。
なお、子どもに障がいがある場合は、20歳までとしています。
2020年6月時点で、児童1人に支給される金額は全部支給が月額43,160円、一部支給は所得によって43,150~10,180円まで10円単位と異なります。
また、2人目の加算額は全部支給が10,190円、一部支給は10,180~5,100円までです。
3人目の加算額は1人あたり全部支給が6,110円、一部支給は6,100~3,060円までです。
全額か一部支給かは、前年度の所得と扶養家族の人数によって定められた所得制限によって決まります。
支給サイクルは、年6回で奇数月に受け取ることが可能です。

ひとり親家庭等医療費助成制度

ひとり親世帯の保護者または子どもが病気や怪我で病院を受診した際、医療費の一部を負担してもらえる制度です。
この制度を受けるためには健康保険への加入が必要で、また市区町村が定めている条件を満たしていなければなりません。

母子福祉資金貸付

母子家庭の母親が就労する際や子どもが就学する際に資金が要る場合、都道府県などの公的団体からお金を借りられる制度です。
シングルマザーの経済的な自立を支え、同時に生活への意欲を強めることを目的としています。
無利子で借りることができますが、保証人が立てられない時は有利子となります。
また、資金の種類によって3年から20年での返済が求められるので、返済が滞らないように注意してください。

この他にも、特別児童扶養手当や障害児童福祉手当、生活保護、就労・修学支援などがあります。

生活関係の公的扶助

生活に係る公的扶助には、以下のものが挙げられます。

公営住宅への入居

公営住宅とは、低所得な世帯が割安な賃料で入居できる賃貸住宅のことです。
入居には色々と条件があるため、誰でも入れるわけではありません。
しかし、離婚後のひとり親世帯は生活に困っていると見なされるため、公営住宅へ優先的に入れます。

公営交通機関の割引や水道料金の免除

児童扶養手当を受けている場合、公営交通機関にあたるJRなどの通勤定期券の購入が割引になります。
さらに、水道料などの免除制度も受けることが可能です。
※各市町村によって異なりますので、児童扶養手当の申請時にご確認ください。

母子生活支援施設

離婚した母子が入所できる施設です。
母子を保護するし、自立した生活を促すための支援を行ってくれます。
施設内には個室の居室があり、そこで母子は生活を送れます。
相談員が常駐しているので、生活に関する相談ができ、さらに保育サービスなど子育てに関する支援を受けることも可能です。
DV被害を受けた母子が入所するケースが多いため、詳しい場所や建物の写真は基本的に公表されていません。
そのため、DVを理由に離婚をした母子は安心して生活を送れます。

所得制限とは?

公的扶助の制度によっては、所得制限によって支給額が制限される場合があります。
例えば、児童扶養手当やひとり親家庭等医療費助成制度が所得制限に基づき給付される仕組みとなっています。
所得制限とは、一定以上の所得がある場合は支給の対象として外される判断基準、または受給が限定されることです。
児童扶養手当の場合、前年度の所得と扶養家族の人数に応じて全額か一部が支給される仕組みとなっています。
では、児童扶養手当の所得制限を例に見ていきましょう。

全部支給

・扶養家族が0人…所得が49万円以下
・扶養家族が1人…所得が87万円以下
・扶養家族が2人…所得が125万円以下
・扶養家族が3人…所得が163万円以下

一部支給

・扶養家族が0人…所得が192万円以下
・扶養家族が1人…所得が230万円以下
・扶養家族が2人…所得が268万円以下
・扶養家族が3人…所得が306万円以下

所得は給与所得控除などの経費を差し引き、さらに養育費の8割程が加算されています。
4人目以降は1人増えるごとに38万円が加算されるため、4人の場合は全部支給だと201万円以下、一部支給は344万円の所得者が対象です。
この上限を超える所得を得ている場合は、支援制度が利用できない場合があるので注意してください。

公的扶助の申請に必要なものとは?

公的扶助は市区町村役場で申請が可能で、以下のものを用意しておきましょう。

・請求者と児童の戸籍謄本・抄本
・請求書と児童を含む世帯全員の住民票の写し
・送金用に請求者名義の預金通帳
・年金手帳や基礎年金番号の通知書 など

必要なものは利用する制度によって変わってくるので、何が必要か事前に確認してください。

公的扶助を使えば離婚後も不安なく生活が送れます。
しかし、生活のすべてがカバーされるわけではないので、離婚時は必要に応じて慰謝料請求や養育費・財産分与の取り決めをしておきましょう。
相手が応じない可能性もあるなら、弁護士への相談がおすすめです。
弁護士は法的な視点で慰謝料・養育費・財産分与の請求に関するサポートや、相手が応じないときの対策の提案などができます。
不安をなくして気持ちよく離婚するためにも、ぜひ離婚の悩みは弁護士に相談してみてください。

   

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