年金分割について

目次

年金分割について

離婚の際に忘れずに手続しておく必要のあるものの一つとして、年金分割があります。

これは厚生年金を算出する基礎となっている「保険料納付記録」を分割する制度で、分割を受けた側の将来受給できる年金額が増えるというものです。

元配偶者が受給する年金の半分をもらうことができる制度ではないことに注意が必要です。

また、厚生年金についての制度ですので、配偶者が国民年金のみを納付している自営業者である場合には、年金分割は利用できません。

また、婚姻前に納付していた年金については分割の対象とはなりません。

 

年金分割の種類

年金分割には、合意分割3号分割の2種類があります。

 

【合意分割とは】

合意分割は、名前の通り、夫婦間で年金分割することと、按分割合(2分の1以下)について合意しているか、

裁判所で按分割合が決定されている場合に婚姻期間の「保険料納付記録」を分割できるという制度です。

離婚から2年以内に請求する必要があるもので、年金分割を受ける側は、第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者の全てが対象となります。

そのため、共働き家庭で、夫も妻も働いていた場合でも、標準報酬総額が多い方から少ない方に分割することが可能です。

 

★分割の対象となる期間★

分割の対象となる期間は、離婚までの婚姻期間となります。

当事者間で合意ができる場合は、公正証書を作成して、按分割合について記載してもらう方法が一般的です。

合意ができない場合は、相手の住所地の家庭裁判所に対し、年金分割調停か審判を申し立てることになります。

 

★按分割合★

按分割合は最大で2分の1ですので、当事者間の合意があっても、これを超える按分割合とすることはできません。

 

【3号分割とは】

一方、3号分割は、分割を受ける側が離婚後に社会保険事務所に申請するだけで、元配偶者の「保険料納付記録」の2分の1を自動的に分割する効果が生じるものです。

請求期間は、合意分割と同じく離婚から2年以内で、

当事者間の合意が必要ないため合意分割よりも利用しやすい制度ですが、分割の対象となる期間、分割を受ける側に制限があることに注意が必要です。

 

★分割の対象となる期間★

まず、分割の対象となる期間は平成20年4月1日から離婚までの婚姻期間のうち第3号被保険者(いわゆる専業主婦)であった期間です。

平成20年4月1日以降に婚姻し、婚姻期間中、継続して専業主婦をしてらっしゃった場合には、3号分割だけで、漏れなく年金分割ができます。

しかし、平成20年4月1日以前に婚姻していた場合は、同日以前の期間分については分割の対象とはなりませんし、婚姻期間中に第1号被保険者や第2号被保険者であった場合には、

3号分割は利用できません。

 

このように、合意分割と3号分割は分割の対象機関や請求制限について違いがあるため、どちらの制度を利用できるのか十分に確認しておく必要があります。

 

ただし、年金分割をしていても、受給資格がなければ、将来年金を受給することはできません。

年金分割はあくまで、将来もらえる年金が増えるものですので、年金分割をしたからといって、直ちに何らかの金員を受け取れるようになるものではありません。

離婚後、収入が少なく、年金保険料の支払いが困難等の事情があれば、保険料の免除申請をするなどして、将来、年金を受給できるようにしておくことが重要です。

 

年金受給中の方の場合

既に年金を受給している夫婦が離婚する場合にも、年金分割制度は利用できます。

既に支給された年金については、年金分割の影響は及ばず、年金分割の請求をした月の翌月分から年金額が変更されます。

年金分割後、元配偶者が死亡してり、再婚した場合も、年金分割の効果に影響は生じません。

 

★離婚調停の中で年金分割をすること

夫婦関係調整調停(離婚調停)を申立て、離婚に向けて調停での解決を目指す場合には、調停手続き内で年金分割についても併せて協議し、解決することが可能です。

ご自身で手続きをされる際、年金分割を請求する場合には、

夫婦関係調整調停の申立書の内の年金分割に関する部分にチェックするのを忘れないようにしましょう。

 

年金分割を請求できる方

年金分割は男性から女性に年金の一部を渡すというイメージを持たれている方も多いようですが、

標準報酬総額の多い方を分割して、少ない方に渡す手続きですので、

男性がいわゆる主夫として家庭を支え、女性が働いていた場合には、男性は女性に対して年金分割を請求することができます。

 

共働き世帯で、双方が同程度の収入を得ていた場合に、相手に年金分割を請求すべきか分からないという場合には、

「年金分割のための情報通知書」を取り寄せて、検討する必要があります。

これには、対象機関の標準報酬総額が記載されるため、これが相手より少なければ、年金分割を請求した方がよいことになります。

50歳以上で老齢年金の受給資格を満たしている場合は年金分割時の年金見込み額も知ることができますので、

離婚後の生活設計をするためにも、離婚を考え始めた段階で「年金分割のための情報通知書」を取り寄せることをおすすめします。

ただし、この「年金分割のための情報通知書」を取り寄せただけで、将来年金分割の効果が生じることになるわけではありませんし、

基本的には相手に知られずに入手することができるものですので、具体的に相手に離婚を切り出す前であっても取り寄せておいて問題はありません。

 

当事務所では、多数の離婚に関するご相談、ご依頼を受けておりますので、離婚についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

ご相談のご予約は電話またはメールで受付をしております。

   

離婚・慰謝料請求のご相談は
弁護士法人 筧(かけひ)
法律事務所へ

平日夜間・土日も面談可能(要予約)